まいど!生活調査員イルカです!
住んでるアパートの換気扇が壊れてしまった!
気付いたら窓ガラスが割れていた!
アパートの住んでいると、付帯設備の故障が起こったり、フローリングや壁紙が剝れて傷んでる状況に遭遇した人も多いのではないでしょうか。
意外と知られていないのですが、アパートの一室を借りている賃貸人は、フツーに使ってれば、賃貸物件設備の修理や取替はほとんどする必要はないんです。
実はわたくしイルカ、仕事で賃貸物件の管理をしていた時期がありました。
担当エリアの集合住宅を20件ほど、住民の方からの修理の相談・業者との打ち合わせ・工事の発注など、不動産の管理・保全の仕事を経験。
今回は、意外と知られていない賃貸物件の原状回復義務について解説していきます。
もくじ
原状回復とは(簡単なイメージ)
原状回復の意味は、破損などがあった物件の設備や内装を補修して、部屋を借りた最初の状態に戻すことを指します。
そして問題となるのは、その範囲。
部屋から退去する際にどこまで元どおりにすべきか、ここが曖昧になりやすくトラブルの元となっているのです。

経年劣化、通常損耗であれば負担を免れる
時間がたてば当然、壁紙や電気設備は劣化したり壊れたりするもの。
気を付けて使っていても、いつかは壊れたり取り換えが必要になるのはあたりまえ。
このような損傷を法律上では通常損耗というのですが、防ぎようがない経年劣化を、賃借人が負担するのはあまりにも酷すぎますよね。
また物件を借りている人は賃料を払っており、この賃料には設備使用料の費用も含まれています。
賃料に加え、さらに修理費や取替費用までも負担すると、賃借人にとっては2重の負担となってしまうのです。
つまり、賃借人は普通に使用していれば設備の修理費などを払う必要はなく、民法上こういった費用は大家さんなどの貸主が負担すべきとしています。
地震、台風などによる損傷も対象外
居住者が防ぎようがない事例として、地震、台風などの自然災害による物件の損傷があります。
契約書上の特別規定がない限り、これも当然、居住者が費用を負担する必要はありません。
台風でガラスが割れたりしたら、真っ先に管理会社へ修理の依頼をしちゃいましょう。
ポイント
- 通常損耗であれば、居住者は費用を免れる
- 賃料には付帯設備の使用料としての意味合いもある
- 災害などの損傷は貸主・大家負担
- 特約があれば、そっちが優先。居住者負担となることも
管理人も住民も、原状回復の法的知識を理解していない。
部屋を借りている人はどこまで修理・取替の義務を負うのか、逆に大家さんはどこまで対応するべきなのか、意外ですが現場で担当する人たちでも正確に理解していないケースがほんとに多い。
居住者は不動産に関して素人ですから、細かいルールを知らないのは理解できます。
大きな集合住宅だと年配の管理人が多いかと思いますが、こういう人達も法令やルールを正確には理解していない。
さらに管理会社の担当者も完璧には法律を理解していないんですね(窓口担当は基本若い平社員だから)。
だから設備が故障・破損した場合に、貸主・借主どちらが費用を支払うべきか曖昧になってしまい、これまでの慣習だけで決められて立場の弱い借主(住民)に負担を強いられるケースがよくあるのです。
よくある事例
私が物件の保全・管理を担当していた際に、居住者の費用負担となるのか頻繁に相談があった事例がこちら。
修理・取替の相談事例
- 畳の日焼けによる表替え
- 風呂・トイレの換気扇の故障・取替
- 窓ガラスの熱割れ
- 扉の塗装剥がれ
- 水栓の異常音、水漏れ
- 給湯器の故障
- フローリングの経年劣化による剥がれ・傷み
- 壁紙の経年劣化による剥がれ
結論として、居住者(借主)が変な使い方をせずに普通に使用していたならば、上記の事例はすべて居住者負担とはなりません。大家・貸主の負担となります。
ただし契約書上で特別の規定を設けて居住者の負担とし、それに同意していると費用を支払う必要があります。
窓ガラスの熱割れとは?

窓ガラスの中には、金属のワイヤーみたいなのが入っているものがあります。
ガラスを割れにくくしたり、割れた際の飛散防止に効果があるのですが、太陽熱に弱くワイヤーが膨張して割れてしまうことがあるのです。
これも居住者には何の落ち度もありませんから、当然費用を負担する必要はありません。
電気設備の耐用年数はだいたい10年
風呂やトイレの換気扇、これも取替の依頼はとても多いです。
またお風呂の給湯設備の故障・取替も頻繁に相談があります。
給湯設備一式の取替費用相場は、だいたい20~30万円程度。
めちゃくちゃ高いので、間違っても自分で払わないようにしましょう。
電気を使用する設備は、経過10年で故障する確率が急激に上がってきます。
変な使い方をせず、通常どおりに使用していれば居住者は取替費用を負担する必要はありません。
フローリング、壁紙は要注意

居住者と費用負担でトラブルとなるケースが多いのがここ。
もちろん、防ぎようがない経年劣化による剥がれや変色は家主・貸主負担となるのですが、異常な使い方・管理の不手際で損傷した場合は居住者負担となってしまいます。
たとえば、内装だと下のような事例。
居住者負担となるケース
- たばこによる変色
- モノを引きづったり、ぶつけて損傷させた
- 空調管理が原因のカビ
- 子供の落書き
たばこによる変色や何かをぶつけて損傷させた場合には、居住者も納得して修理してくれますが、カビによる張替えについてはよくトラブルになります。
内装のカビは原因がはっきりしないケースが多く、家主と居住者でトラブルになるケースが多いのです。
通常、風通しを良くして水回りの換気扇を回し続ければ簡単にカビは発生しないのですが、他の原因(水漏れや建物構造上の原因)も考えられなくはないので、居住者も納得しないケースがあります。
内装の張替えは高額になりがち
たばこによる変色で壁紙を張り替えするとなると、部屋前面を張り替える必要があります。
全面となると業者次第にはなりますが、だいたいの費用相場は20万以上となってきます。
賃貸物件内での喫煙はやめておいた方が無難です。
ただ、壁紙やフローリングの一部張替だけで損傷を直せるならば、すべてを張り替える必要はありません。
壊した部分だけを張り替えればいいのです。
それ以上は物件のグレードアップに寄与するものと判断され、居住者の負担するべきものではないと取り扱われています。
退去時の清掃
よく契約書上で、退去時にはハウスクリーニング代を支払うことと記載されているケースがあるかと思います。
これは最高裁判例上認められている特約ですので、費用は相場より高く腑に落ちない気持ちは分かりますが、居住者は納得するほかありません。
基本特約は両者の同意で効力を発揮しますが、特約について大家・管理会社は折れてくれるケースは稀、事実上の強制事項となっています。
原状回復をめぐるトラブルとガイドライン
国土交通省では、居住者と貸主とのトラブルを解決するための指標としてガイドラインを制定しています。
このガイドラインでは、居住者の原状回復の範囲を細かく解説していますので、トラブルになったりどちらが修理の費用負担をするべきか判断に迷ったら、読んでみるとよいでしょう。
↓:国土交通省のガイドライン・ダウンロード先リンクを貼っておきます。
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000021.html
費用負担でトラブルとなったら
退去の際、賃貸物件の管理会社から取替・補修を求められて納得できない場合は、下の事項を伝えてみましょう。
- 自分は異常な使い方はしていないし、きちんと管理して使用していた。
- 通常損耗の範囲なので、負担義務はない
- 支払っている賃料には設備使用料も含まれている。二重の負担になってしまうのでは。
- 原状回復のガイドラインを見ると、それは居住者負担ではない。
これである程度無用な費用負担を避けられるはずです。
皆様の生活に少しでもお役に立つこと出来たら幸いです。
ぜひご参考になさってください。